個別株の銘柄分析:Edwards Lifesciencesを事例に

株式投資で増やす
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はじめに:株の分析について

株を品定めする上で、何をしたらいいか迷いますよね。とりあえず投資に関する雑誌やウェブサイトに行って、いいと言われている株を購入するというのもありかもしれません。専門家がいいと言っている背景にはどんな分析がなされているのか、今日はご紹介したいと思います。

投資アドバイザ
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株の銘柄分析には主にファンダメンタル分析とテクニカル分析の2種類のアプローチがあるんです。

投資1年目
投資1年目

そうなんですね。どっちがより重要なんですか??

投資アドバイザ
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多くの場合、これら2つのアプローチを組み合わせて分析します。ファンダメンタル分析で企業の実態を理解し、テクニカル分析で市場のセンチメントやタイミングを判断するので、見るべきところが違うんです。

投資1年目
投資1年目

そっか。企業が好調でも、市場の先行きが良くなければ株価は良くならない可能性もありますもんね。

株の銘柄分析には主に2種類のアプローチがあります:ファンダメンタル分析とテクニカル分析です。ファンダメンタル分析は、企業の基本的な財務状況や経済指標を分析するアプローチです。これには、企業の収益、成長率、負債、市場の位置づけなどが含まれます。この分析は、企業の健全性や将来の成長潜在力を評価するのに役立ちます。一方、テクニカル分析は、株価の動きや取引量などの市場データに基づいて行われます。このアプローチは、過去の市場の挙動やトレンドを分析し、未来の株価の動向を予測するのに使われます。

多くの投資家は、これら2つのアプローチを組み合わせて使用します。ファンダメンタル分析で企業の実態を理解し、テクニカル分析で市場のセンチメントやタイミングを判断するのです。

特にファンダメンタル分析は、投資家が株式の内在価値を理解し、より賢明な投資判断を下すのに役立ちます。また、長期投資においては特に、企業の基本的な強さを評価することが成功の鍵となります。

今回は米国の医療機器メーカを例にファンダメンタル分析を行い、現在の理論株価と今後投資するべきか否か(私見)について解説したいと思います。ただ、最新の企業価値や理論株価については雑誌や情報系サイトに多く掲載されているので、ここまで詳しい計算は不要かもしれませんが、どのように求められているかを理解するために説明いたします。

ファンダメンタルズとは?投資における重要ポイント
-ファンダメンタルズとは何か?-ファンダメンタルズとは、企業の業績や財務状況などの基本的な情報を分析し、今後の株価の動きを判断することです。ファンダメンタルズ分析は、株式投資において最も重要な分析手法の一つであり、投資家はこの分析を通じて、投資対象となる企業の将来性や収益性を評価しています。ファンダメンタルズ分析は、企業の財務諸表や決算報告書、ニュースリリース、アナリストレポートなどの情報を収集し、分析します。財務諸表には、企業の資産、負債、収益、費用などの情報が記載されており、決算報告書には、企業の業績や財務状況に関する詳細な情報が記載されています。ニュースリリースには、企業の最新の業績や事業計画などの情報が記載されており、アナリストレポートには、企業の業績や株価に関するアナリストの評価が記載されています。これらの情報を分析することで、企業の将来性や収益性を評価することができます。例えば、企業の収益や利益が伸びている場合、その企業は将来性があり、株価も上昇する可能性が高いと考えられます。逆に、企業の収益や利益が減少している場合、その企業は将来性がなく、株価も下落する可能性が高いと考えられます。ファンダメンタルズ分析は、株式投資において非常に重要な分析手法ですが、企業の将来性や収益性を100%正確に予測することは不可能です。そのため、ファンダメンタルズ分析を行う際には、複数の情報源から情報を収集し、慎重に分析することが大切です。
投資の神髄、テクニカル分析を理解しよう【基礎編】
テクニカル分析とは、金融市場の過去の出来高や値動きなどのデータを元に、今後の動きを予測するために用いる手法です。代表的なものにはチャートを使ったチャート分析が存在します。現在のトレンドを把握するために使われたり、売買タイミングを見極めたりするために用いられています。過去のさまざまなデータを分析することによって、チャートの動きや相場状況、株価の変化といった過去との類似点を探していき、今後の株価を予測していきます。テクニカル分析は、ファンダメンタル分析と並んで、投資家やトレーダーが投資判断を行う際に広く用いられている分析手法です。ファンダメンタル分析は、企業の財務状況や業界の動向など、企業の価値を判断する上で重要な要素を分析する手法です。一方、テクニカル分析は、過去の価格データから今後の値動きを予測する手法です。テクニカル分析は、チャート分析、出来高分析、移動平均線分析、一目均衡表分析など、さまざまな手法があります。チャート分析とは、価格データが時間経過とともにどのように変動しているかを示したグラフを分析する手法です。出来高分析とは、取引された株数や出来高を分析する手法です。移動平均線分析とは、一定期間の株価を平均した線を引き、その線の動きから今後の値動きを予測する手法です。一目均衡表分析とは、価格データ、出来高、移動平均線などを組み合わせたチャート分析の手法です。テクニカル分析は、投資判断を行う際に役立つ手法ですが、万能ではありません。テクニカル分析は、過去の価格データに基づいているため、将来の値動きを保証するものではありません。また、テクニカル分析は、株価を予測する際にさまざまな指標や手法が組み合わされているため、分析が複雑になりがちです。

米国医療機器大手のエドワーズライフサイエンスの将来性

私の米国株のポートフォリオの一つであるEdwards Lifesciences Corp(通称:EW)は、私が個人的に好きな企業の一つです。多くのヘルスケア大手が外部導入(買収や提携)で成長を遂げる中、EWは自社の技術を磨き続け、他社に負けない技術力を持ち、成長を続けている企業です。EWは、心臓弁システムの製造や心臓疾患治療に関連する多くの製品を提供しています。この企業は特に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)などの先進的な医療技術で知られています。その製品は全世界で使用され、多くの患者の命を救っています。

一方、株価という観点では、そのような社会的価値が、株式投資としての価値に直結するわけではなく、ビジネスとしてしっかりと収益を上げているか、継続的な成長を実現できているかというのが重要となります。

このブログ記事では、EWの事業内容から財務状況、さらには株価の理論的評価に至るまで、多角的に企業を分析します。そして、最終的には「EWに投資するべきか?」という疑問に答えを出すための情報を提供します。

投資はリスクとリターンのバランスが鍵です。EWが将来的にどれだけのリターンをもたらす可能性があり、そのリスクはどれだけか。これらの疑問に答えるために、具体的なデータとともにEWの詳細な分析を行います。

1. 会社概要

Edwards Lifesciences Corp(EW):心臓治療のパイオニア

事業内容

Edwards Lifesciences Corp(以下、EW)は、心臓弁の病気を治療する医療機器を開発・製造・販売しているメーカーとして知られています。主に以下の4つの分野で製品と技術を提供しています。

  1. 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR): 大動脈にある弁(血液の逆流を防ぐ両扉みたいな部分)が機能しなくなる病気に対して、人工的な弁を低侵襲に置換できるデバイス。高齢者や手術が困難な患者にも適用可能な、手術の負担が少なく、術後の回復も早い最先端の心臓弁治療方法。先駆的な会社で、高いシェアを持っている。
  2. 経カテーテル僧帽弁及び三尖弁治療: これもまた、侵襲的な手術を避けたい患者に適した治療法。こちらは大動脈弁ではなく、心臓の別の個所にある僧帽弁と三尖弁という部分の治療法。
  3. 外科的構造心臓治療: 一般的な心臓手術に使用される製品群。手術で胸を開いて交換を行う人工弁。
  4. クリティカルケア: 病院内で患者の心血管系機能を測定するための血行動態及び非侵襲的脳・組織酸素化モニタリングシステム。

地理的展開

EWは全世界で事業を展開しており、米国、ヨーロッパ、日本をはじめとする多くの地域で製品を販売しています。これにより、地域に依存しない安定した収益基盤を築いています。

財務状況(簡易)

  • 売上高(2022年12月):5,382.40百万USD
  • 営業利益(2022年12月):1,748.50百万USD
  • 当期利益(2022年12月):1,521.90百万USD
アニュアルレポートとは?会社業績や事業内容を盛り込んだ年次報告書
アニュアルレポートの定義と重要性アニュアルレポートとは、会社の業績や事業内容を盛り込んだ年次報告書のことです。企業、主に大規模な企業、が年1回株主・投資家に発行します。それは、会社の財務状態、運用状況、および将来の見通しなど、会社に関する重要な情報を提供しています。アニュアルレポートは、株主や投資家が会社の経営陣の業績を評価し、投資判断を下すために使用されます。企業の社会的責任活動などの企業の取り組みも記載されています。アニュアルレポートは、企業の透明性を高め、株主や投資家の信頼を得るためにも重要です。企業は、アニュアルレポートを通じて、株主や投資家に会社の経営陣の業績や会社の将来の見通しなど、会社に関する重要な情報を提供することで、株主や投資家の信頼を得ることができます。また、アニュアルレポートは、企業の社会的責任活動などの企業の取り組みをアピールする場としても活用されています。企業は、アニュアルレポートを発行することで、株主や投資家に会社の経営陣の業績や会社の将来の見通しなど、会社に関する重要な情報を提供し、株主や投資家の信頼を得ることができます。また、アニュアルレポートは、企業の社会的責任活動などの企業の取り組みをアピールする場としても活用されています。

2. 投資実績の分析

EWの株価動向:過去から現在

株価の推移

私はEWを3年前くらいに購入してそのときの株価は71.2538 USDでした。それが2023年8月30日時点で76.4700 USDに上昇。この期間での利回りは7.32%となります。すごく高い利回りではないですが、堅調に増やしているといえます。

投資対象としてのEWの魅力

  1. 収益性: 過去の財務データを見る限り、EWは安定した収益を上げ続けています。特に、売上高や営業利益の成長率は注目に値します。
  2. 将来性: 皆さん最近CMでよく聞く弁膜症というのを聞いたことがあるのではないでしょうか。あまり気づかずほおっておくと重症化して心不全に陥ってしまう病気です。EWの主力製品であるTAVRは、その弁膜症に対する治療法です。今後高齢化社会においてますます需要が増えると予想されます。これは、将来的な成長の大きな柱となるでしょう。
  3. 技術力: EWは、心臓治療に関する技術のパイオニアとして知られています。この技術力は、競合他社との差別化や新製品の開発に繋がります。
  4. 世界展開: 米国、ヨーロッパ、日本など、多くの国で製品を販売しているEWは、一つの市場に依存しない強みを持っています。

3. 株価の評価方法と今後の投資戦略

株価の評価方法

株価を評価するにはいくつかの方法がありますが、ここでは主に以下の二つの方法を用います。

  1. 割引現金流量(DCF)法: 未来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算します。この方法は企業の将来性を評価するのに有用です。ただ仮定によって大きく値が変動するので、他の指標やその他の要素を合わせて考えた方が良いかと思います。
  2. PER(株価収益率)法: 企業の利益と現在の株価を用いて、株価が適正かどうかを評価します。この方法は市場の評価を反映しています。

DCF法による評価

割引率(WACC)を8.8%(下限)と7%(上限)、永続成長率を3.62%(下限)と5%(上限)として計算した結果、EWの株価は32.21USD(下限)と83.39USD(上限)と算出されました。

下限と上限の仮定に基づいて、割引現金流量(DCF)による株価を計算します。

  1. フリーキャッシュフロー(FCF): 953百万ドル(最新のデータ)
  2. 成長率(g): 5%(一般的な仮定)
  3. 発行済み株式数: 600百万株(仮定)

下限の仮定

  • 割引率(WACC): 8.8%
  • 永続成長率(Terminal Growth Rate): 3.62%

企業価値(EV)=953×(1+0.05)0.088−0.0362企業価値(EV)=0.088−0.0362953×(1+0.05)​

=1000.650.0518=0.05181000.65​

=19,328.38百万ドル=19,328.38百万ドル

1株当たりの価値(下限)=19,328.38600=32.21ドル1株当たりの価値(下限)=60019,328.38​=32.21ドル

上限の仮定

  • 割引率(WACC): 7%
  • 永続成長率(Terminal Growth Rate): 5%

企業価値(EV)=953×(1+0.05)0.07−0.05企業価値(EV)=0.07−0.05953×(1+0.05)​

=1000.650.02=0.021000.65​

=50,032.5百万ドル=50,032.5百万ドル

1株当たりの価値(上限)=50,032.5600=83.39ドル1株当たりの価値(上限)=60050,032.5​=83.39ドル

この計算により、エドワーズ・ライフサイエンス(EW)の株価は約32.21ドル(下限)から83.39ドル(上限)と推定されます。これらの値は多くの仮定に基づいているため、実際の市場価格や他の評価方法とは異なる場合があります。

企業価値(EV)とEBITDAによる方法

この方法では、企業価値(EV)をEBITDAで割ります。この比率(EV/EBITDA)は、企業がどれだけ効率的に運営されているかを示す指標とされています。

株価=(企業価値(EV)EBITDA)×最新のEBITDA株価=(EBITDA企業価値(EV)​)×最新のEBITDA

  1. 企業価値(EV): この値は通常、市場価格と負債から計算されます。仮に50,032.5百万ドルとします(以前のDCF計算から)。
  2. 最新のEBITDA: 仮に1,748.5百万ドルとします(最新の財務諸表から)。
  3. 発行済み株式数: 600百万株(仮定)。

EV/EBITDA=50,032.51,748.5=28.63EV/EBITDA=1,748.550,032.5​=28.63

株価=28.63×1,748.5600=81.52ドル株価=28.63×6001,748.5​=81.52ドル

この計算により、エドワーズ・ライフサイエンス(EW)の株価は約81.52ドルと推定されます。この方法も多くの仮定と最新の財務諸表に依存しているため、実際の市場価格とは異なる場合があります。

今後の投資戦略

  1. 長期保有: EWの基本的なビジネスモデルや将来性を考慮すると、長期的な保有が有望です。
  2. リスクヘッジ: EWが業界平均よりも高いPERを持っているため、他の低PERの銘柄でバランスを取ることを考えても良いでしょう。

4. 業界環境と競合他社との比較

業界環境

EWは医療機器業界に属しており、特に心臓関連の製品で強みを持っています。この業界は高齢化社会の進行とともに、今後も成長が期待される分野です。

競合他社との比較

主な競合企業としては、Medtronic(MDT)、Boston Scientific(BSX)、そしてAbbott(ABT)が挙げられます。

  • P/E比率: EWの33.8倍は、MDTの35.6倍、BSXの40.2倍に比べて低い。
  • ROE: EWの22.56%は、MDTの13.5%、BSXの9.2%よりも高く、資本効率が良い。

その他の重要な投資判断指標

  • 自己資本比率: EWの70.00%は、業界平均よりも高く、財務基盤が堅牢です。
  • 流動比率: 302.80%と非常に高く、短期的な負債に対する支払能力があります。

5. 総合的な分析

財務状況と業績

EWは売上高、営業利益ともに一定の成長を見せており、特に最近の四半期ではその成長が加速しています。また、キャッシュフローも安定しており、財務基盤は非常に堅牢です。

株価評価

複数の方法で株価を評価した結果、現在の市場価格はやや高め(下限32.21ドル)である可能性も指摘され、短期的には調整が入るかもしれませんが、堅実な業績と将来性から、中長期的には上限(83.39ドル)に近い株価で見積もっていていいのではないかと考えています。

競合環境

  • 割安性: EWのPERは業界平均に近く、特にBSXに比べてはるかに割安です。
  • 収益性: EWはROEとROAで競合他社を大きく上回っています。これは資本効率が高いことを示しています。
  • 財務健全性: EWの自己資本比率も最も高く、財務が非常に健全であることがわかります。

競合他社と比較しても、EWは資本効率や財務健全性において優れています。これは、EWが業界内で強い競争力を持っているので、この健全性が実現できるものと考えられます。

指標 / 企業名Edwards Lifesciences (EW)Medtronic (MDT)Boston Scientific (BSX)Abbott Laboratories (ABT)説明
割安性関連指標
PER33.830.189.935.1株価と1株当たりの利益(EPS)の比率。低いほど割安。
PBR7.32.14.34.8株価と1株当たりの純資産(BPS)の比率。低いほど割安。
EV/EBITDA23.814.230.018.5企業価値とEBITDAの比率。低いほど割安。
収益性・効率性関連指標
ROE22.56%7.22%4.85%14.01%自己資本に対する利益の割合。高いほど資本効率が良い。
ROA15.94%4.13%2.62%7.00%総資産に対する利益の割合。高いほど資産効率が良い。
財務健全性関連指標
自己資本比率70.00%56.60%54.1%49.3%自己資本が総資産に占める割合。高いほど財務が健全。

6. まとめ

まとめ

  • 心臓関連の医療機器で強い競争力
  • 財務状況は堅牢で、業績も一定の成長
  • 競合他社と比較しても、多くの指標で優れている
  • 短期的には下がる局面もあるかもしれませんが、背後ある堅実な業績と高い技術力、高齢化社会にマッチしたニーズを背景に将来の成長が見込まれるため、中長期的には見込みがあると考えています

総評

少し個人的な好みも入ってしまっているかもしれませんが、総合的に考えると、EWは堅実な業績と将来の成長性、強固な財務基盤を持つ企業であり、中長期的な投資には十分に魅力的な銘柄であるといえるのではないかと考えます。一方で、配当がないということと、米国株ということで為替の影響を受けるので今から投資を検討する人はその辺は注意が必要です。

以上、あくまで私個人の分析による個人の考え方ですので、投資はリスクをご考慮の上、個人の判断でお願いいたします。

おわりに

今日はエドワーズライフサイエンスを事例に個別株のファンダメンタル分析の詳細まで触れました。投資をする上ですべてこのような詳細分析を行う必要はないと思いますが、様々な書籍や雑誌で掲載されている理論株価というものがどのように算出されているのか、市場で株価というのがどのように決められていくのかというのが少しでもわかってもらえたら幸いです。

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